ホテルで男二人に追い詰められた私は

ひたすら拒み続けた。

すると、智ちゃんの態度は豹変。

『やらさんのだったら、
ホテル代オマエも出せよ。』

「最初に、お金ないって言ったやん。」

六千円ほどのホテル代は
高校生の私に
ポッと出せる金額ではなかった。

なんて、卑怯なんだろうと思った。

でも、彼の口調は
それまでの優しいものではなくて…

「後で払うから、立て替えといて。」

『は?今ないと意味ないやろ?』

その日、1日の智ちゃんとは
別人に感じた。怖かった。

しかし、六千円で
身売りするわけにもいかない。(笑)

怖かったけど…
開き直って、
強い口調で言い返した。

「いいよ、今から払うよ。
だから、電話1本させて。
持ってきてもらうから。」

現状を知られるのも
お金を借りるのも嫌だったが
切り抜けるには、
家族に頼るしかないと思った。

てのひら返した彼が憎いのと
ノコノコついてきた自分が
情けないのと…
無事、切り抜けられるのかという
不安と…色んな感情が交差した。

警戒して、にらみつける
私とは反対に、智ちゃんは、
肩の力を抜いてクスッと笑った。

『ごめん、もう良いよ。』
優しい顔付きに戻った。

えっ、根はイイ人?
本当は怖い人?

どっちなんだ~。
ギャップに、戸惑う私。

車に乗って、さぁ帰ろうか…

私んちまで、
あと1キロくらいの所で
ハプニングは起こったんだ。

タイヤがパンクした。
車を停めて…
そこは、さすが男の人だよね、
二人でチャチャッとスペアを
付け替えたんだ。

しかし、今度はバッテリーが
あがって車が動かなくなった。

もう夜だったから…
とりあえず、二人は比較的近くの
後輩んちに泊まって、明日動くって。

私の家までは
歩けない距離じゃなかったから

『どうする?歩いて帰る?』
って聞かれたけど…

もうきっと、この人に惹かれてたんだ。

もっと、一緒に居たいとか
もっと、よく知りたいとか。

二人には悪いけど
そんな緊急事態でさえ
私には何だか珍しくて、
少し楽しかったんだ。

きっと、彼らが大人で
頼り甲斐があったから。

智ちゃんの昼間の優しさに、救われて
よく見せる余裕の笑みが焼き付いて

風呂場の出来事で、意識し始めて
あのギャップが気になって…

まだ、ここで家に帰れば
引き返せたかもしれない。

でも、私はまた、
智ちゃんについてく事を選んだから…

今でも心が揺れるほど…
深く、深い恋をする。

本来なら手が届かない
遠い世界の彼に…
叶わぬと、わかっていながら
恋をする。