あっちゃんに殴られたり蹴られたりして
「別れる!もう別れる!」と
泣き叫んだ私を、

我にかえった彼がなだめようとするが

私は興奮状態で
「もう、嫌!帰って!」
と、繰り返すばかり。

あっちゃんは、とりあえず帰って
夜、また連絡してきたんだ。

とにかく話がしたいから

車に乗って…って…。

私の別れの覚悟は揺るがなかった。

彼は必死に説得したが…
私はダメだった。

私が悪いのは解っていた。

でも、幼い頃から、実の父親の
母への暴力、夫婦喧嘩を見てきて
義理の父親の暴力、虐待にも
耐えて、ヤンキーの姉から毎日
殴られて暮らした私は

知っていたのだ。

一度、手をあげた人間は繰り返す事を。

暴力は、この時、
私の中で大きなトラウマだった。

あっちゃんは何度も
『別れたくない。』と言ったが
それが無駄だと解った時、
急に車のスピードをあげて、
暴走し始めた。

高速でもない普通の国道で
時速100キロ近いスピード。

「危ないよ、やめてよ。」

彼は無言で…
悲しみを隠せない顔で…

私は、本気で心中でもする気かと
思うほど…彼の様子はおかしかった。

彼が、やっと車を停めたのは
海だった。

はたから見たら、恋人のように
私たちは砂浜を歩きながら…

うつ向いて、別れ話をした。

彼は泣きながら、
最後には受け入れた。

あっちゃんを、もっと
大事にしてれば、良かったんだ。

せっかく愛してくれたのに…

彼を傷付けた。
彼の暴力を、許せなかった。

恋をするたび、思う。
もっと大人の自分なら
違う結末があったのに。