ヒロキ君達との楽しい時間は
長続きしなかった。

今、考えてみたら当たり前だ。

私は、昼間、普通に学校に行って

夜だけ、彼らを受け入れて入れば

良かったが…
彼らの生活は、私が思う以上に
過酷だったのだろう。

学校にいけない、警察に見つかると
連れ戻される。人の目も気になる。
(割には髪の色も派手な集団だったが。)

行くところはない、お金もない。

五人も居れば…
色々と大変だったろう。

ご飯は、どうしていたのだろう。
トイレは、どうしていたのだろう。

未来は、不安だらけだっただろう。

そんな生活、長くは続かないことを

彼らだけが知っていた。

ある日…
『大切な話がある』
と、夕方、ヒロキ君に呼び出された。

近くの駅まで行く私の足は、
はずんでいた。

「やっと、告白かな。
付き合うのかな。」

そんな期待をしていた私には
ヒロキ君の話はショックだった。

『明日、遠くへ行く事になったから、
ごめん、もう、お別れなんだ。』

彼らは遠くの県に
宛てがあるということで

旅立つことを決めたのだ。

ずっと、言えなかったと謝る。

でも、ヒロキ君の口から、
直接、私に話したかったのだと。

皆が、私を励ました。

『無事、着いたら、
また連絡するから。』

彼らの交通移動手段はヒッチハイク。
(知らない車を止めて、乗せてもらう。)

5人いっぺんは無理だから男女に別れるらしい。

女子組は割かし簡単に
乗せてもらえても、
男子組には厳しく、難しい方法だろう。

最後の夜を過ごした。

ただ、抱き合ってキスをした。

翌日、涙を見せずにサヨナラした。

私が1人暮らしで独立してたら

彼を助けてあげられただろうか…

到着の知らせが届く事はなかった。

約1年後、聞いた彼らの結末。

一人の男の子はすぐにリタイア。

自分の意思で、施設に戻った。

女子組はヒッチハイクを繰り返して…

途中で知り合った
おじさんの世話になった。

カップルの男の子(K君、後に出現)と
ヒロキ君は、
なかなか乗せてもらえず…

飢えと寒さに耐えかねて…

自分達から施設に戻る道を選んだとか。

辛かっただろうな…。ヒロキ君。

当時、そんな結末を知らない私は、

彼らの事を、気にしつつも…
忘れる、矛盾した努力を繰り返した。