ヒロキ君と知り合ったのは高2…
彼は中3だったかな。

親に恵まれなかった彼が…
入れられた施設から…
脱走してきたんだ。

鑑別所に入ってた知り合いが
出所後、施設送りになって…

5人で、その施設から脱走した。

その5人の中には、カップルが
一組に男の子が2人…知り合いを
除いては皆、中学生だった。

夜になって、母がスナックに
行くと、行くあてのない彼らは
うちを訪ねてきた。

私は、親にバレないよう泊めてあげた。

簡単なご飯も食べさせてあげた。

カップルの二人は見た目から
バリバリヤンキーで…
いや、みんな悪い感じだったんだけど…

お世話になる私の前ではいい子達だった。

夜な夜な騒いだり、
時にはカラオケに行ったり、
そんな日々を繰り返すたび、
周りが私とヒロキ君を
くっつけようとし始めて…

何かにつけてひやかしたり、
互いをオススメしたり…

元々、気は合ったんだけど、
ますますヒロキ君を
意識するようになったんだ。

夜は抱っこして眠るようになった。

お互い、告白とか付き合おうとか

なかったけど、自然と寄り添ってた。

皆の中でも公認になってたと思う。

ヒロキ君は、優しかった。

落ち込んでたら、話を聞いてくれて
淋しいときは手をつないでくれて…。

私の中で、正式に付き合うのは、
時間の問題だと思ってたんだ。

いつも皆で部屋に居たから、
キスと、指止まりでHは
最後までなかったんだけども…

そんな恋も悪くないって知った。

でも、ある日
聞いてしまったんだ。

ヒロキ君の優しさと決意を。

『付き合わないし、Hもしない。』

『ずっとは一緒に居られないから。
いつか、置いていかなきゃいけない
子だから、悲しませるから
俺のものには出来ない。』

もし、普通に出会えてたら、
私たち、普通の幸せがあったのかな?

今もあの日々を忘れてないよ?

貴方の幸せを、祈っているよ?

今、あなたは、どこで何をしてるかな。