秀樹と付き合って残ったもの。



深い深い心の傷と…

同じ世界を見たくて一緒に吸った

シンナーの黒歴史。

真似したタバコの焼き跡。

腕にカミソリで彫った秀樹の名前跡。



このままじゃダメだと思ったんだ。

いや、ずっとずっと思ってた。



だから

『紹介したい子が居る。』って、

友達に言われた時、

電話、代わってもらって

ある男の子と話したんだ。



それが、博(ヒロシ)君。



博君は気さくで、おしゃべりが上手くて

優しくて、マメで、積極的で。



どんどん気になり始めた。

まだ見ぬ人なのに惹かれてた。



電話では、まるで恋人同士に

なった頃、会おうってことになった。



最初だから、皆と居たカラオケに

来てもらった。



噂には聞いてたけど、博君は

顔も体格も良くて素敵だった。



楽しい一日だった。

その日は、クリスマスだった。



朝から秀樹の家に呼ばれてた。

なのに、博君と会う方を選んだ。



夜、怒った秀樹が電話してきた。

『何で、今日来んかったん?』

「友達とカラオケ行ってた。」

『最低。もう、別れる。』



「良いよ。別れよう。」

『え?』

「じゃあね。サヨナラ。」

『ちょっと、待って。』



私は電話を切った。

胸がドキドキした。

でも、不思議と…スッキリした。



言いなりから解放だ。



博君は彼女と別れたばかりで

『付き合おう』って言ってくれてたから

私は、彼氏と終わらせた事を告げた。



そして、私と博君は付き合い始めた。



秀樹が初めての彼だったから、

私、男の人のこと良く

知らなかったんだ。



甘いこと言って、優しいふりして

素敵な笑顔で…



嘘ついて、女だまして、ただ

やりたいだけの人が居るって…



博君がそういう人だってこと

まだ、知らなかったんだ。