(今日は、何がいいか……)

 夕食のレシピを考えていると、ポケットに納められている携帯電話が鳴り出す。

 電話の相手はアイザックからと考えていたが、着信主は友人ではなくアルム。

 突然のアルムからの着信にシオンはクローリアがいる部屋を一瞥した後、コソコソと玄関口に向かうのだった。

『お久し振りです』

「今日は……」

『旦那様からの伝言です』

「……怒っている?」

『いえ、そのようなことではありません』

 アムルの話は、アンバード家の者がパーティーを開くので、戻って来いというものであった。

 その話に、シオンの脳裏に真っ先に浮かんだのは「アーク」の憎たらしい表情。

 アンバード家主催ということで行くのを躊躇ってしまうが、父親からの誘いがあるので断るわけにはできない。

「いつ?」

『五日後です』

「……そうか」

『何かご不満でも?』

「家政婦は?」

『ああ、そうでした』

「一緒に連れて行った方がいいのか……それとも、理由をつけて置いていくべきか。父さんに聞きたい」

『わかりました。お聞きしましたら、ご連絡いたします』

「有難う」

 グレイへの確認の為に、アムルは電話を切る。

 電話が切れる音を確認するとシオンは携帯電話をポケットに仕舞い、キッチンへ帰る。

 しかし、すぐに食事の支度をすることはない。

 クローリアをどうすればいいか――

 アムルには「父に聞いて欲しい」と頼んだが、内心は彼女を連れて行きたいという気持ちがないわけでもない。

 違う世界を見せたく、もっと多くのことを学習してほしいからだ。

 だが、父親からの回答によっては、連れて行けない。

 このあたりは、素直に従うつもりでいた。

 冷蔵庫を開け使えそうな材料を探していると、再び携帯電話が鳴り出す。

 アムルからの電話と瞬時に判断したシオンは、小走りで玄関に向かうと電話に出る。

 予想通り電話の主はアムルで、グレイからの答え「一緒に連れて来ていい」ということをシオンに伝えていく。