消える前に……



「楽しかった。
ありがとう…。
俺、幸せな日々、
ずっと探してた。
でも、
こんなに幸せな日々、
手に入ると思ってなかった。
全部、全部
綾のおかげだよ。
ありがとう…
ありがとう……。」


何の音もない

静かな観覧車の中で、

綾の耳元で

小さくつぶやく

俺の声だけが聞こえた。


「え……。」


綾が少し驚いたような顔をして

小さな声で

何か言おうとした。


綾が俺のこと、

わかってるように

俺だって綾のこと

わかってるつもりだ。


俺はもう一度口を

綾の口に持っていき、

口をふさいだ。


綾は何も知らなくていい。