消える前に……



俺はそばにいるだけで、

綾に何もしてあげることが

できなかった。


涙をぬぐってあげようと

思ったけど、

なぜか心が

そうさせないように

拒んだのだった。


『今は綾の涙を拭いてあげてはいけない』


そう思ったのだった。


手で顔を覆い、

声も出さずに静かに

涙を流す綾を見て

俺はすごく辛くなった。


俺はどうすればいいんだろう……?


友達を傷つけて、

綾まで傷つけている……。


朋樹や一輝だって、

俺に本当に良く

接してくれるけど、

本当は俺が

みんなのことや

みんなとの思い出を

忘れていることに

傷ついていることくらい

わかっていた。