消える前に……



体調を崩し始める前まで

俺も綾と同じように

家にいる間だけ

指輪をつけていたので、

俺の指には

指輪は付いていなかった。


だから俺は綾の指輪を見て、

何も思い出すことが

できなかったのだった。


この指輪は俺と綾にとって

本当に大切な指輪で、

その指輪と一緒に

俺が綾に言った約束は

それ以上に大切なものだった。


俺は指輪のことも、

その約束のことも忘れていて、

何も気にせず

言った言葉は

綾の心をものすごく

傷付けてしまったのだった。


綾は悲しみを堪えきれず、

涙を流してしまった。


もちろん俺は

綾がなぜ泣いているかも

わからないし、

その涙の意味さえ

わかることもなかった。