しばらくして、スマートで、黒縁のメガネをかけた男性が教室に入ってきた。
「席につけー。補習始めるぞー」

あっ…佐藤先生だ。

あたし以外、他の人はぞろぞろと席に座る。
佐藤先生はドスドスと教卓に向かう。
手には、たくさんのプリントを抱えている。
「えー、今からプリントを配るから、できたら先生の所に持ってこい」
佐藤先生の声はよく響き、うるさい。
しかも、チョークで字を書くとき、力の入れすぎか、よくチョークを折っている。
ある意味、熱血なんだろう…。
みんなは、裏で佐藤先生のことを、”チョーク折り熱血先生”と呼んでいる。
センスのない名前だ…。

前からプリントが回ってくる。
科目は数学…。
あたしは思いっきりプリントを睨んだ。

なんでよりによってあたしの嫌いな数学なのよ!
ムカつく!

なんて思いつつも、プリントを終わらせないと帰れない。
それが補習のルール。
重いシャーペンを握りしめた。

が、

1問目からつまってしまった。
額からさらに汗が流れる。

ああ!もうっ‼︎
何この問題‼︎
全然分かんないじゃん‼︎

シャーペンをコツコツと机に叩きながら、必死に無理やり頭を回転させる。
でも、暑くて考える気がでない。

あー…アツっ…。
こんなんじゃ、全然プリント進まないに決まってるじゃん。

しかも、周りをチラッと見ると、佐藤先生の目を盗んで、誰かと話してクスクス笑っていたり、紙を回している。
最初は無視してきたが、気づけば消しゴムの投げ合いまでしている。
しかも、さっきよりざわつきが大きくなっている。
しかし、佐藤先生は何かの書類を書いているのか、注意をしない。
さすがに腹が立ってきた。

何やってんの⁈
あんたら、何のために補習来てんの?
真面目に補習受けないなら、帰ってほしいんだけど!
佐藤先生も注意してよ‼︎

苛立ちがMAXに達しようとした時…
「あっ…」
誰かがヤバイ!と感じであたしを見た瞬間、頭に何か固い物が当たった。
見てみると、それは誰かがちぎった消しゴムだった。

…………ブチッ‼︎

あたしの中で何かが切れた。

ガタッ‼︎

気づけば、あたしは席から立ち上がっていた。