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親指で肩甲骨あたりをぐっと押す。ごりっと食い込むその面積は、たしかに体温を感じている。紺は起きない。もう一度押す。ごり。もう一度。ごり。紺は起きない。起きないけれど、生きている。体温がある。

私はオカシイ。昨夜も今も、私は眠る紺にふれている。ふれて、ナニカを確かめている。やっぱりそれは昨日と今日の私が繋がっているからであって、そうならないを求めてもきっとどうにもならない。


全部のデータを消した携帯電話。閉ざされた狭いロッカーの中で、そこには新しいものが入ってきているだろうか。それとももうロッカーから出されて落とし物としてどこかの倉庫にでもあるのかな。受けることでしかデータの増えない黒の塊は、もう本当に私のものではないのか。

私は私で自分のものを選びたい。だれかが無理矢理に私に押し付けた思い出とか消しても消しきれない記憶とか私の操縦外にある内蔵とかいらない。いらないいらない。

いい思い出だけ私が持ち続けていたい思い出だけ覚えていられたら一番いいのだと思う。それができないのなら。古くなったカッターの刃を折るみたいにさ、軽々しく捨てたいのだ。昨日の私、一昨日の私、去年の私。