「あ、もうこのあたりでいいよ」

「お」


あたしの声に小さく返事をした吉岡。

キキーッとゆっくりブレーキをかけた。


「つーか…俺んちから近いんだな」

「えっ?そうなの?」


自転車をおりながら答えると、目が合った吉岡が言った。



「あの角を曲がって三軒目の一軒家」

「えっ?あのウサギがいるとこ?」

「お、そうそうそこ。ウサギ五匹。ばあちゃんちなんだけどな」

「ふーん…おばあちゃんちなんだ?そっかそっか」


元々は小学校が同じだったし、五年生まではこいつもこのあたりに住んでたんだもんね。

引越したけどおばあちゃんちに戻ってきて同居ってわけか。

大変だよね、同居って。


「でも面倒くさくない?おばあちゃんと暮らすのって。うちなんてずっと同居だし今はボケ始めてるから何言ってるか訳わかんない時あるし、本当大変だよ」


あたしがそう言うと、何故か吉岡は一瞬黙り込んで。


「……別に。こっちのが全然いいよ」


つぶやくようにそう言った。