「そういうことだから帰って?」
「えっ、そういうことだからって…どういう…」
意味が分からない。
理解しようにもできるわけない。
「は?分かんない?女来てんだよ」
それ…は…分かってるんだけど。
「だから帰って?つーかもう、来なくていいから」
「えっ?」
ケント君はあたしを玄関から押し出した。
ガチャ、という鍵の音がマンションの廊下に響く。
もう…来なくていいから…
頭の中で、今言われた言葉が何度も何度もぐるぐるまわる。
不思議と涙は出なかった。
やっぱりな、っていう気持ちと、何であんな男を好きだったんだろうって思う苛立ちと。
それでいっぱいだった気がする。



