こいつ痴漢だよね。


ケント君とのことでヘコんでいた気持ちが怒りへと変わっていく。


ケント君にも触れられなかった脚…

何でハゲに触られなきゃなんないんだよ!



「あの、痴漢とかキモいんですけどー!やめてもらえますか」


車内に響き渡るくらい、あからさまに大きな声を出した。


だけどちょうど駅に着き、逃げられたらマズイ、そう思って振り返ると…そこにはもうさっきのおっさんではなく若い大学生くらいの男が立っていた。


「は?俺なんもしてねーし」


苛立つようにあたしを見るその人は大きな声で言葉を続ける。


「駅員呼ぶか?警察呼ぶか?」


詰め寄るように威嚇してくるその姿はとても怖くて。


「すいません…」


あたしは降りるはずではないその駅で降りてしまった。