「つーか、スカートってこんなにスースーするんだな」
「結構寒いでしょ?」
「まぁ…でも、一生に一回くらい経験できて良かったよ」
「ふふっ、とか言ってこれから女装にハマッたりして」
笑いながらあたし達はふたりでベンチに腰掛けた。
「今日、すっげー星見えるよな」
「本当だー!綺麗だね」
見上げた空には無数の星が散りばめられていて。
寒さも忘れて冬の空をしばらくながめた。
「あ、そうだ」
「ん?」
「実はさ、お前のお父さんから預かってるものがあるんだ」
吉岡はそう言うと、何かを思い出したかのように紙袋から淡いブルーの封筒を取り出した。
「これ」
「あぁ、ありがと」
受け取ったあたしは封筒の宛名を見た瞬間、何故か時が止まったような気がした。
「お母さんの…字だ」
見慣れた綺麗な字。
真優へ、と書かれていた。