「弟をイジメてた奴ら全員に…復讐してやりたかった」
誰と誰と誰がそんなことをしていたのか。
突き止めて…そいつらをボコボコにしてやりたかった。
でも、その子は言ったんだ。
主犯格になっていた奴らはいたけど。
そいつらだけの責任じゃないと。
「何人もの奴が見て見ぬフリをしてた……僕も、そのうちのひとりで…」
そう言って、頭を下げられた。
「助けようと思えば…助けてやれたのに…僕らがそれをせんかったから…だから…本当にすいませんでした…っ…」
泣きながら謝られた。
その子が勇気を出して話してくれなかったら、あいつのこと…何も分からないままだった。
あいつの苦しみも悲しみも、寂しさも。
何も知らないまま、終わってしまっていたかもしれない。
だから…
「僕…っ…イジメがあったって言います…証人になります」
その子はそう言ってくれたけど。
「…その気持ちだけでいいよ」
俺はそう答えた。
気持ちだけ受け取ると。
その勇気だけ、もらうと。
…そんなことをして、もしこの子が話したことがバレてしまったら。
この子がまた、同じような目にあってしまうかもしれない。
学校は信用たくてもできない。
だからそれだけは…嫌だった。



