だけど、六年生の春。
そんな俺にも恵まれた出会いがあった。
友達ができた。
同じクラスになった、蒼井純平。
純平はクラスの中でも一番目立ってて、いつもおかしなこと言ってクラスメイト達を笑わせてて。
明るくて面白くて、純平の周りにいるやつらは、いっつも笑ってた。
「吉岡野球できる?一緒にやらん?」
だから、純平が俺にそう声をかけてくれた時、正直すごく戸惑ったけど…
「うん、やる!転校してくる前は野球やってたんだ」
俺は勇気を出してそう答えた。
そしたら、純平はニッと笑って。
「そうなん?俺のチーム入ってや!」
そう言いながらみんなと一緒に校庭へと連れ出してくれた。
バットもグローブも久しぶりの感触だった。
土を蹴る音も。
じんわり浮かんできた汗も。
どれも久しぶりで。
「今のんアウトやろ!」
「よう見てたか?セーフやんけ!」
「アホ!見とったわ!お前寝てたんか?夢みてるんか?」
「はぁ?目つむってたら何も見えへんやろ」
苦手だった関西弁のやりとりも、純平と誰かの会話を聞いていると、初めて笑いがこぼれていた。
その日を境に、俺の田舎暮らしは大きく変わっていった。



