でも、家庭環境は複雑だった。
父さんと母さんは仲が悪くて、いつもケンカばっかしてて。
五年生の夏休み、この町から引っ越すことになったのは、そんな親たちの離婚が決まって。
あっという間だった。
あっという間に、住み慣れたこの町から引き離された。
いつも遊んでいた友達に、クラスメイトに、先生に。
バイバイも言えないまま、母さんの実家がある和歌山の田舎町へと引越した。
はじめは楽しかった。
海、山、川。
自然がいっぱいで、空の青と、海の青。
透き通ったキラキラした川に、山のいろんな緑。
一年に一度くらいしか遊びに行けなかった場所だったから、毎日楽しくてそこら中を駆け回ってた。
「やっほー!」
俺が叫んだら、隣で秀二も叫んでた。
でも、楽しかったのは最初だけだった。



