天国への切符




でも、もう無理だった。

制服のズボンに、ポタポタと落ちていく涙。


どう頑張ってもこらえきれなくて、キュッと唇を噛み締めた。




「…泣きたい時は…思いっきり泣けばいいんだよ」


「……っ…」


「言ってくれたでしょ?吉岡もあたしに」



平野はそう言いながら俺の背中をそっと撫でた。



「我慢しなくていいんだよ。泣きたい時は…思いっきり泣いたらいいの」



その言葉で、張り詰めていたものが消えていった。


我慢しなくていい。

泣きたい時は泣けばいい。


平野にそう言われたら、背負っていたたくさんの後悔が、ほんの少しだけ軽くなっていくような気がした。



泣きながら、あの夏の終わりを思い出した。



「んじゃ、いってきます」



最後に見た、生きていたあいつの姿。

新学期の初日、学校へと駆け出して行った秀二の後ろ姿。



「何でだよ…何でこんなこと!」


そして、変わり果てた姿で冷たくなってしまった秀二を見て、泣き叫んだあの日のことを…思い出した。