「今日はさ、みんな仲直り出来たばっかりで…サエ達にもまだ話せてないんだけど」
「…うん」
「お母さんが死んじゃったのは事故なんだけどね……あたしのせいみたいなものでさ」
えっ?
平野のせい?
「おばあちゃんのことでお母さんとケンカしてて…それで、謝らなきゃって思ってたのに…謝ることも出来ないまま、あたしは学校に向かおうとして。なのに…お母さん、寒いからコート取ってきてあげるって…あたしに言ってさ」
「…うん」
「それなのにあたし…無視して走り出しちゃって。そしたらコートを持ったお母さんがあたしのこと追いかけてきてて…それで……名前呼ばれて振り返ったら…目の前でトラックにはねられたんだ」
平野はそう言うと、キュッと唇を噛み締めた。
「でもね、本当はお母さん…末期ガンだったらしいの。生きていられる時間は少ししか残ってなかったって」
「えっ…」
平野の横顔はすごく寂しそうだった。
「事故が起きなくても、お母さんに残された時間は決まってたって。…死んじゃって初めて…お父さんから聞いたの」
もう今にも…
泣きだしてしまいそうに見えた。
「なのに…あたし全然知らなくてさ。毎日毎日ずっと好き勝手して…いっつも反抗してばっかで。
作ってくれたお弁当をさ…食堂で捨てたこともあったの」
悲しい出来事を思い出させてしまったようで、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていった。
思い出したくないことを、俺のせいでまた、思い出させてしまってる。
「ごめん…そんな…思い出させるようなこと言って」
「ううん、そうじゃないの。だって…忘れちゃいけないことだからさ」
…えっ?
「後悔してることは全部、それを背負って歩いていきたいと思うんだ」
平野の言葉に、心が震えたような気がした。
後悔していることは全部、背負って歩いていきたい。
その言葉が、胸に大きく響いた。
目の前の景色が、急速に滲んでいく。



