サエのお父さんのことは、それから五人で話し合った。
サエのお母さんに、あたし達も一緒に話をしに行って、それでも治らなかったり、これ以上ひどくなるようだったら、警察か、学校か、自分達の親か。
誰でもいいから大人に相談しようと。
あたし達は、背伸びをして大人ぶっていたけど、やっぱりまだまだ子供で。
子供だけでは解決できない問題には、やっぱり大人が必要で。
大人はずるいとか、大人はあたし達を縛りつけるとか、いろんなことを思った時もあったけど。
でも、あたし達を守ってくれるのもまた、大人なのだと気付いたから。
お母さんが…教えてくれたんだ。
あの日、あたしが寒くないようにコートを持ってわざわざ追いかけてきてくれたお母さんが。
毎日あたしの健康を気にしてお弁当を作り続けてくれていたお母さんが。
毎日いってらっしゃい、おかえりと送り出し、迎えてくれていたお母さんが。
いつもそばで見守ってくれていたお母さんが。
あたしに教えてくれたから。
きっとあたし達がSOSを出せば、大人はちゃんと守ってくれる。
あたし達が真っ直ぐに向き合ったら、絶対に助けてくれる。
だから、目を逸らさずに大人を信じてみてもいいんじゃないかって。
今は、そう思える自分になれた。



