「でもさ、もう無理かもって思った時があって。その頃よく美波がうちに来たり美波の家に行ったりしてたから…相談してみようかなって思ってた時があったんだ」
サエはそう言って少し黙りこんだ。
でも、全てを話そうと決めたのか、サエはまたすぐに口を開いた。
「でも、そんな時に美波と先輩の話を聞いちゃって。正直すごく…悔しくなったの。美波の家はみんな超良い家族でさ。おばさんもおじさんもお姉ちゃんも弟も、みんなすっごい仲良くて。いっつもみんな笑ってて。友達の私にも優しくて」
うつむいたサエは、言いながらクスッと笑った。
「嫉妬しちゃったんだよね……バカみたいに」
そして顔をあげると、美波を真っ直ぐに見つめて言った。
「ごめんね美波。美波にはあんなに良い家族がいるのに、先輩まで取らないでよって…そんなふうに思っちゃって……ごめんね」
サエの瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいた。



