「あと…ばあちゃんのことも…」
おばあちゃん?
「本当は最後まで悩んでたんだ。でも自分がいなくなったら誰も世話をできる人がいなくなるからって。だから自分がいるうちにちゃんとばあちゃんの環境を整えてあげたいって。それで…認知症に対応している施設をたくさん調べて、実際お母さんが足を運んで色々と見て聞いて。ここなら安心だって言ったところに決めようとしてたんだ」
ひとつひとつが、繋がっていくような気がした。
おかしいと思っていたことが繋がっていくような、そんな気がした。
あたしは何を見ていたんだろう。
お母さんがおばあちゃんのことを面倒くさいなんて思ったり、邪魔に思っていたはずなんてないのに…
薄情、だなんて。
どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
自分がバカすぎて情けなかった。
「…何でっ…」
「真優…」
「何でお母さんなの?…何でそんなお母さんが病気にならなきゃいけないの?何で事故にあったの…っ…何であたしじゃないの?あたしが…っ…あたしが死ねば良かったのに!」
泣き叫ぶあたしを、お父さんはギュッと抱きしめた。
強く強く、抱きしめられた。
「バカなこと言うな…真優がそんなこと言ったら…お母さんが一番悲しむだろ…っ…」
お父さんも、そう言いながら泣いていた。
ふたりで声をあげて泣いた。
お母さんを思いながら…バカみたいにわんわん泣いた。
だけどどれだけ泣いても涙は枯れないのだと知った。
泣いて泣き止んでも…それでもまた、涙が出てくる。
一晩中、ずっとそんな繰り返しだったから。



