「…泣きたい時は、思いきり泣けばいいんだよ」
「…っ…」
「だから…我慢するな」
ねぇ吉岡。
こんなあたしが泣いていいのかな。
思いきり泣いても許されるの?
溢れてくる涙を何度も何度も拭った。
それでも涙は全然止まってはくれなくて。
「…っ、もう…大丈夫だから…」
優しく包んでいてくれた吉岡の腕から、あたしはゆっくりとすり抜けた。
「…っ…ありがとね、吉岡…」
泣きながら言うと、吉岡は少し黙って。
だけどすぐに言ってくれた。
「俺に出来ることがあったら何でもするから」
「…うんっ…」
「だから…何でもかんでも一人で抱えるな。死んだ人間を生き返らせることは無理だけど…なんもできないかもしれないけど…泣いてるお前を笑わせることくらいなら俺にも出来るから。な?」
「…んっ…」
「泣いた後は俺が笑わせてやるから」
吉岡はそう言うと、ポンポンとあたしの頭を撫でるようにして。
「…じゃあ、またな」
言いながらゆっくりと玄関のドアを開け、静かに出て行った。