何で今、声をかけてしまったんだろう。


何でここに立ち寄ってしまったんだろう。



自分の行動にすぐに後悔した。




シーンとする空気。

ダメだ、帰らなきゃ…。



慌ててとめていた自転車に向かって歩き出した。




「人のことびっくりさせといて勝手に帰んな」



だけど、吉岡の声で足が止まる。



ゆっくりと振り返ると吉岡はもう笑ってて。


涙を拭いたのか、その目にはもう涙は浮かんでいなかった。


それでも泣いた痕はハッキリと分かる。


ずいぶんと泣き腫らしたような、そんな目をしていた。