「おっす」
いきなり聞こえてきた声に思わずハッとした。
「…なんだ、あんたか」
気がついたら隣を走っていた吉岡の姿に、ふぅ、と息を吐いた。
「なんだってなんだよ」
「別に」
「つーかなんかあった?」
「何が?」
「いや、ずっと近く走ってたのに全く気付いてくれる気配なかったから」
吉岡はそう言ってずっと隣を走ってくる。
「てか何で横走ってんのよ」
「は?俺んちこっちだし」
「………。」
面倒くさ、と思いながら自転車を漕いだ。
だけど、何故かふと口にしてしまってた。
「なんかさ……人ってよく分かんないね」
そしたら吉岡は。
「人間なんてみんな分かんないもんじゃね?分かったら苦労しねーし」
前を向いたまま、そう言った。
「あんたは楽しそうじゃん、転校してきてから友達もすぐに出来て毎日誰からしらに囲まれてるし」
「あんたは、って、平野は楽しくねーの?」
「…楽しくないわけじゃないけど」
「けど?」
「友達って何なのかな、とか。このままでいいのかな、とか。いろいろ思うわけよ」
何で吉岡にこんな話をしてるんだって感じだけど。
でも、茶化すこともなく結構ちゃんと聞いてくれてるから。
「ちょっと寄ってくか」
帰り道にある夕日坂公園の前でそう言われた時。
「うん」
あたしはそう答えて吉岡のあとをついて公園に入った。



