天国への切符




結局、美波のほうは休みだったようで、気付いたら昼休みを迎えていた。


いろいろ思うことはあったけど、あたし達はいつものように四人で食堂にいる。



サエは日替わり定食。
聖子は玉子丼。
ノアはサンドイッチ。


そしてあたしの目の前にはいつものお弁当箱。



あの時。お弁当を捨てた時は毎日食堂でいいなんて思っていたけど。

あの日、お母さんがありがとうなんて言ってきたせいで、家ではイライラする毎日だけど渋々お弁当を食べてあげてる日々だ。


これは罪悪感?


いや、きっと違う。


よく分からないけど、あんなことを言ったあたしに、変わらず毎日お弁当を持たせてくるから、仕方なく食べてあげているだけ。


そう、仕方なく…食べてるだけだ。



「っていうか昨日知ったんだけど、私の聖子って名前、お母さんがファンだったアイドルからついた名前だったんだって、ありえないよねー、好きなアイドルの名前だからってそれを娘につけちゃうなんて」


騒がしい昼休みの食堂。

目の前に座っていた聖子が愚痴をこぼすように呆れた顔で苦笑いした。



「へぇーっ?そうなんだ?私のノアはお姉ちゃんがつけたらしいけど。でもひらがなで、のあだよ?何で漢字じゃねーの?って感じだし」


「え、のあって可愛いじゃん!ひらがなも超可愛いよ?」


「えーっ、聖子も可愛いじゃん」



ノアと聖子が目の前でそんなやりとりを交わす。


だけど、何故かいつもと雰囲気が違ってて。

珍しく静かなサエをチラッと横目で見た。


やっぱり今日のサエは少し変。


いつもは一番喋るし、どんな話題にだって必ずのってくるのに。