「嫌だったら嫌って言えよ」

「……」

「黙ってるってことは切ってほしいってことだよね?」

「……」

「嫌じゃないんだ?じゃあ切ってあげる」



ウソだよね…マジで?



「サエ!」



美波の前髪を持ち、ハサミをいれようとした瞬間、あたしはサエを呼び止めた。



「あははっ、切っちゃった」



だけど……もう遅かった。


ザクッという音と共に、美波の机の上にパラパラと落ちた髪。



「だって何も言わないんだもん」



サエはそう言うと、ケロッとした顔でノアにハサミを返した。