衝撃で足が動かない。



shikiさんやケンさんが何か話しかけているけど、耳に入ってもこない。



雪ちゃんと遊さんと一緒になこの暇つぶしをしてくれてたんだろう、ginjiさん。



ドラム担当のginjiさんは、確か何処かの国とのハーフで、日本人離れした顔の持ち主。



男性ファンが多いSSGの中で圧倒的女性支持を集めている。



そんな彼から何か言われたなこが、笑ったんだ。



なこが笑ってくれた、それはとても嬉しいことで…。



一歩前に進んだなこを抱きしめたい気持ちもある。



けど、俺が一番に笑わせたかった。



俺以外のオトコの前で最初に笑って欲しくなかった…。



キレイすぎるその微笑みを、他の誰にも見せたくない。



そんな感情の方が勝ってしまって、なこの側に行くことができない。



「おい、淳。どうした?」



肩を揺さぶられ、気づけば目の前にケンさんのドアップ。



「あ、いや。…ちょっとトイレ」



ケンさんの顔越しに、奥の方でこちらに気づいたなこが見えた。



立ち上がりこちらに駆け出そうとしているなこを避けるように、トイレへ逃げる。



今までに感じたことのない気持ちの変化についていけない。



キタナイ何かが俺の心臓で蠢いていて…。



今の俺じゃ、なこに八つ当たりしてしまいそうだ。



「クソ…」



トイレに座り込み、落ち着かせる。



なこが笑った。



それは本当に心から喜ばしいことだ。



大丈夫、なこを優しく抱きしめられる。



この“嫉妬”なんて感情は仕舞い込めるはずだ。



相手がginjiさんじゃ負け戦もいいところ。



俺は所詮なこの“保護者”。



なこのスキは、家族への“好き”なのだから。



落ち着け、オレ…。



「おい、淳。どうした?大丈夫か?」



扉の向こうでケンさんの声がする。



余りに遅い俺を心配したんだろう。



「大丈夫ッス。いけます」

「そうか。相当デカイの出たんだな」



そういうことにしておこう。