外に出ると雨が降っていた。

私の心みたいだ、なんて考えて都合の良い解釈だなあと自嘲じみた笑みが零れてしまう。

傘を持ってこなかった私はその中を濡れて走った。

彼に狡いと言ったのに、私だって相当狡いじゃないか。

最後にキスするなんて、私がどれだけ彼のことを今も思っているか彼に伝わってしまう。

優しい彼のことだからきっとそれに心を痛めるのだろう。

そこで漸く生温かい雫が頬を伝うのを感じる。


「馬鹿だな、私」


額に手を当て、ポロポロと雫が流れるのを見られないように俯く。

さっき彼の指で弾かれた場所が心なしか熱いような気がして、どこまでも私は彼が好きなんだと思い知らされる。

何故、人はずっと想い合っていられないのだろう。

感情は簡単に変遷していってしまう。

そして、移り変わり行く中で感情なんていつか忘れ去ってしまう。

永遠がないのは一瞬を大切にするためにあるのだとしたら、何故その大切な一瞬を忘れてしまうのだろう。

悲しい、苦しい。

恋愛感情はなくとも大事にしてくれてる彼の気持ちが心に染みて痛い。

ずっと好いてもらえていたのならどれだけ幸せだっただろう。


「あのね」


残酷なほど優しい貴方を痛いほどに心に刻んで。


「ずっとずっと、すきだった」


さよなら、愛しいひと――。




Fin