ふと、蒼介さんが
私の長袖のカーディガンに目をとめる。


「こんな時期にそんなの着て、
暑くねぇ…」


そこまで言った蒼介さんが
さっと私の手をとり、袖をめくった。


両方の手首に、
くっきりと蒼介さんの手の痕が
痣になって残っていた。



「こんな…。

痛か…ったよ…な。

…本当に、悪かった…。」



下を向いて黙ったままの蒼介さんを
見ていると、
どうしようもなく哀しくなった。


私以上に傷ついている蒼介さんの
心がわからない…。



どうして
こんなことになってしまったのか

どうしてもわからなかった。



しばらく2人で無言のまま歩いた。


なにか、なにか、違う話をしよう。


これで、最後だから。
今日で最後だから。


今だけ昨日のことは忘れて
普通に話そう。


せめて、笑っておしまいにしよう。