獣系男子×子羊ちゃん

蒼介さんは
行き場を失ったケーキのかけらを
自分のくちに放り込むと、
フォークをかえしてよこした。


そうして顔を近づけて


「残さず食えよ。」


と微笑む。



そして今度は、
蒼介さんの前髪が
私の額に触れるギリギリまで
顔を近づけてきた。


「モモ、ちょっとだけ我慢できるか?

一樹には内緒な?

ストーカー、ちゃんと退治しような。」



そう囁いて
テーブルに置かれた私の手に、
大きく骨ばった手を重ねる。



「そ、蒼介さん?!」


「大丈夫だから。」



そう言いながら、
もう片方の手で優しく私の頭をなでる。



そして、蒼介さんは
そのまま更に顔を近づけて

ふわっと
触れるか触れないかのギリギリに

唇を

私のオデコ、まぶた、ほっぺたへと

近づけてきた。



そのたびに蒼介さんの前髪が
肌に触れる。


そのまま、ギリギリ触れない距離で
蒼介さんの唇が

今度は、首筋から胸元へと降りてくる。



「蒼介さん!な、なにしてっ!」



「もうちょっと、我慢して。」



本当に唇が触れているわけではないけど

ものすごく近くにせまる
蒼介さんの唇と

柔らかく触れる
蒼介さんの前髪に緊張して

身動きがとれない。



ストーカーに見せたいのは
よく、わかってる。


でも、

でも、ここは大通り沿いのとても
「人目につきやすい」場所で、

店内にもたくさん人がいて…。



もう、恥ずかしさと緊張と、
今まで味わったことのない浮遊感に
とまどってしまって、

頭が混乱して、
なんだか涙がでそうになってきた。



こんなところで、
こんな状況で泣いてなんていられない。


泣いちゃだめだ。

振りをしているだけ。

本当にキスされてるわけでは
ないんだから。


頭ではわかっているのに、
もうどうにもならなくなってくる。


蒼介さんは、
年上の人にしか興味ないんだから。


ストーカーに見せるためなんだから
私がしっかりしないと。


そう思おうとしても、
もう頭も心も混乱してしまって


……涙が溢れそうになる。