幸せの花が咲く町で





「篠宮さん、どう?
彼氏とはうまくいってる?」

ある時、同僚の岡村さんに声をかけられた。
岡村さんは私と同期で、けっこう気が強くて苦手な人だった。



「え…?あ、あぁ、まぁ……」

「そう…それは良かったわ。
それはそうと、パーマがすっかり取れてるわね。
そろそろ美容院に行かないと……」

「そ、そうね……」


彼氏が出来たんじゃない?って最初に言って来たのも岡村さんだった。
その時は私も浮かれてたから、否定もせずに、彼氏は松川瞬似だとか言ってしまったこともある。
岡村さんからは、その後もたまに、同じような質問をされることはあって、その度に、私はついつい智君のことを喋ってた。
岡村さんはカンが良いから、なにかを感じたのかもしれない。
この頃はお金がなくて服装や髪型にも構わなくなってたから、そういうことからなにか気付いたのかもしれないと思った。
なにも本当のことを話さなくとも、別れたといえばそれで良いのに、私はまだそうは言いたくなかった。
せめて同僚の前だけでは、幸せな女を演じたかった。

その日の帰り、私は電気屋さんに立ち寄り、激安のヘアアイロンを買った。
母に髪を少し切ってもらい、次の日の朝は早起きして髪を整え、以前買った服を着て出社した。



今日は仕事が終わってから彼氏とデート……
そんな偽りの私を演出するためだった。