幸せの花が咲く町で





智君に騙されていたことがショックで、私は、毎晩、声を押し殺して泣いた。

お金を取られたことはもちろんだけど、それよりも、想像していた結婚生活がすべて嘘だったことが……
そして、いい年をしていながら、いとも簡単に騙されてしまったことが悔しくて悔しくてたまらなかった。
私に残されたのは、借金と深い心の傷だけ。
智君は、憎んでも憎みきれない人だけど……それでも、嫌いになりきれない自分自身に無性に腹が立った。



(智君は、最初から最後まで、ずっと私に優しかった……
それは、智君も私のことを少しは愛してくれてたからじゃないだろうか……?)



そんなことを考えては、また自分自身に幻滅した。
騙されてひどい目にあっても、まだこんな甘いことを考えてるなんて……



(私は馬鹿でどうしようもない女だわ……)



もちろん、警察に届ける気なんてさらさらなかった。
誰かに打ち明けることもなかった。
こんなこと…誰にも言えるはずがない。



本当なら、もう死んでしまいたいくらいの気持ちだったけど……
そんなことをしたら、母さんに迷惑がかかってしまう。
死ぬならお金を返し終わってからだ。


私は、魂の抜け殻のようになりつつも、ただひたすらに働いた。
居酒屋のバイトも、当然続けていた。
大変だと思ってた借金の返済も、智君に遣うお金と比べたら、随分と楽だった。
お母さんのリハビリ代、ホストをさせないためのバーテンのバイト代との差額、会う度に使うラブホのお金や食事代、そして智君へのプレゼント……
当時は麻痺してよくわからなかったけど、いかに智君にお金を遣ってたかがようやくわかった。



(……本当に、私って馬鹿……
どうして、気付かなかったんだろう……)



悲しくて…悔しくて……



それなのに、まだ智君のことが忘れられなくて……


私の涙は、なかなか止まらなかった。