幸せの花が咲く町で





「智君、これ……」

「なに、これ?」

「お母さんへのお見舞い。
裸でごめんね。」

私はティッシュに包んだ5万円を智君に手渡した。
食事代だけじゃなく、ホテル代も智君が払ってくれて、いくら私が出すって言っても受け取ってくれなかったから。



「いいよ、そんなの。
気を遣わないで。」

「これは智君にあげるんじゃないの!
智君のお母さんに受け取ってほしいものなんだから!」

「でも…そんな……」

「いいから、受け取って!」

私はお金を智君のポケットにねじ込んだ。



「……かおり、ありがとう!」

智君は私を抱き締め、何度もお礼を言ってくれた。



「かおり…母さんがもう少し元気になったら、会ってくれる?」

「え……?」

「そして、母さんが退院して、もう少しゆとりが出来たら……」

智君が言おうとすることには察しが着いた。
女性なら誰もが一番幸せを感じるであろうその言葉……
でも、智君はその先をなかなか言ってはくれなかった。



「……ゆとりが出来たら、何?」

待ちきれず、私はその先を催促した。



「……それはその時に言うよ。
今はとにかく、この状況をなんとか乗り越えなきゃね!」

言ってくれなかったことに少しがっかりはしたけれど、智君の無邪気な笑顔にほだされ、苛立つことはなかった。