幸せの花が咲く町で





「智君……大丈夫?」

「……大丈夫って言いたいところだけど……大丈夫じゃないみたい。
かおり、ちょっと休みたい。」

そう言って、智君は、ある建物を視線で示した。



お店を出た智君は足元もふらついていて、気分が悪いって言い出した。
きっと、酔ったせいだろうってことで、ベンチに座って少し風にあたらせてみたけど、それでも智君の様子はなかなかよくならず、智君は座ってるのも辛そうな状態で……



「じゃ…じゃあ、少しだけ休んでいこうか。」

智君が指し示した建物は、いわゆるラブホ。
行ったことはもちろんないけど、そのお城のような外観を見ればそのくらいのことは私にもわかる。
きっと、智君は気分が悪くて横になりたいんだ。
横になる場所っていったら、やっぱりそういう所しかない。

だから、私は、智君に肩を貸しながら、そのラブホを目指した。



「え…えっと、どうすれば……」

フロントに誰かいるのかと思ったらそんな人はいなくて、部屋の画像が並んでるだけで……
戸惑い立ち尽くす私の横で、智君はなにやらてきぱきと作業をして……



「こっちだよ。」

智君は慣れた様子で歩いていく。
ついさっきまでふらついてた足も、ずいぶんしっかりしてるように見えた。


部屋に入ると、突然、智君に抱きしめられ、そして、智君の唇が私の唇を塞いだ。
それは、この前とは比べ物にならないほど、濃厚なキスだった。



「と…智君……
ど、どうしたの?」

「かおり…ごめん!
気分が悪いって言ったのは嘘なんだ。
まだ早いのはわかってる……
でも、君への想いが押さえきれなかった。
最低だってわかってるけど……我慢出来なかったんだ……!」

そう告白した智君の瞳は真っ直ぐで、澄み切っていて……
私はその情熱的な瞳に、魔法にかけられたみたいに、身体が動かなくなっていた。



「いやだったら、引き返して良いんだよ。
本当に最低だよね。
こんな嘘吐くなんて……
恥ずかしいよ……今すぐここから消えてしまいたい……
僕は最低だ…!」

叫ぶようにそう言った智君の瞳から、大きな涙の粒が流れ落ちた。



「智君……泣かないで!
あなたは最低なんかじゃないよ。」



こんな状況で引き返すことなんて出来ない。
きっと、私も心のどこかではこうなることを期待していたんだと思う。



そして、私達は結ばれた。



夢か現実かわからないほど高揚した気持ちの中で、下着も新調して来て良かったと、冷静な私が考えていた。