幸せの花が咲く町で





「かおりーー!」



待ち合わせの場所にはまた三十分くらい早くに着いた。
智君を待ってる間に、私は生まれて初めて、見知らぬ男性にお茶に誘われた。
驚いたけど、その反面、どこか嬉しくもあり、不思議なことに自信にも繋がった。



「どうしたの?
この前よりずっとセクシーじゃない。
すっごく素敵だよ。」

「ま、またまたぁ……」

「本当だって。
ほら、あの男……かおりのことを見てるよ。」

「見てないって。
さ、そんなことより、早く何か食べに行こうよ。
智君、お腹すいてるんでしょ?」

私は、智君の背中を押して、レストラン街の方へ歩き始めた。







「ここ、すっごく美味しいね。
智君、よく来るの?」

「ううん、初めて。
夜景が綺麗だって聞いてたから、かおりと一緒に来たかったんだ。」


智君が連れて行ってくれたのは、レストラン街からは少し外れた小さなビルのレストランだった。
ガラス張りの外壁からは煌びやかな夜景が広がり、店内の装飾もアンティークな雰囲気で、とてもロマンチックだ。
値段もそう高くはないというのに若い子達が少ないせいか、落ち着ける隠れた穴場といった感じの店だった。



「かおりも飲もうよ。」

智君はさっきからけっこうワインを飲んでいて、頬が赤く染まっていた。



「う、うん。じゃあ、少しだけ……」

普段は全く飲まないから、たった一杯飲んだだけでなんだか身体がふわふわしていた。
でも、私が飲まないと智君も楽しくないだろうし、私自身も飲みたい気持ちだったから、もう一杯だけ飲むことにした。


「智君…お酒は苦手って言ってたけど、実はけっこう好きなんだね。」

「……お酒は苦手だよ。
でも……飲まなきゃいられない時だってあるよ……」

私が言ったなにげない一言のせいで、智君の表情が変わった。
やっぱり、智君にはなにかある。
メールで訊ねた時にも、なにもないって言ってたけど、そんなのは嘘だ。
智君には、なにか大きな秘密があるんだと思った。