幸せの花が咲く町で

「かおり…正直に言って。
さっきのこと、怒ってない?」

「……怒ってないよ。」

「本当に?」

智君はいたずらのバレた子供みたいに、上目遣いで私をちらっと見た。
そんな智君に、私は精一杯の笑みを浮かべて頷く。



「だって……智君は私のメル彼でしょ?」



普段の私にはとても言えないことを口にした。
綺麗だとか言われて、少々、舞い上がってたせいだと思う。
智君は一瞬顔を上げ…そして、なんともいえない切ない表情で、さらに質問を続けた。



「かおり……僕のこと、どう思った?
……がっかりした?」

私は焦って首を振る。
こんな格好良い智君に、がっかりなんてするはずがない。



「がっかりなんてしてないよ!格好良すぎてびっくりしたくらいだもん。」

「かおり……無理しなくて良いんだよ。」

「本当だって!智君はすごく素敵!
今までに会った人にもそう言われたんじゃないの?」

「……そんな人いないよ。
メールでも言っただろ?
かおりみたいにメールが楽しいと思った人も、かおりみたいに長く続いた人もいない。
だから、会ったこともないよ。」

「そ、そうなの?」

確かに、今までのメル友とは数回のやりとりで終わったって言ってた。
私が初めて会うメル友だということは知らなかったけど、考えてみればそれは当然のことだ。
数回のやりとりしかなかったら、まさか会うことにはならないだろうから。



「かおり……もうメールの返信は今日でおしまい…なんてこと…ないよね?」

私をじっとみつめる智君の心細い声に、胸がきゅんとときめいた。



「ないない。そんなこと、あるはずないよ。」

「じゃあ……これからも、会ってくれる?」

「……うん。」

「やったーーー!」

「と、智君、声が大きい。
皆が見てるじゃない。」

「そんなこと、どうでも良いよ!
僕、嬉しいんだもん!
ありがとう、かおり!
大好きだよ!!」

少年みたいな純粋な笑顔を浮かべ、智君は私の手を両手で握り締めた。
そんな彼に、私の心は完全に持っていかれた。