幸せの花が咲く町で





(もうそろそろね……)



あまりに張り切りすぎて、私は三十分も早くに着いていた。
智君の会社の近くの繁華街で待ち合わせることになった。
待ち合わせの時間が近づくにつれ、楽しみな気持ちはあるものの、不安も同じように膨らんで、私は逃げ出したいような気分になっていた。
私にしては精一杯のおしゃれをしてきたけど、あたりを行き交う若い女の子達の弾けるような魅力にはとても敵わない。
元々美しくもなく、地味で、しかも三十路の私になんて、声をかけて来る人さえいない。



(何を浮かれてたのかしら…
智君だって、きっと実物の私を見たら愛想をつかすはず。
そんなこと、最初からわかってたはずなのに……)


帰りたい……
会って、いやな想いをするくらいなら、このまま会わずにいっそ帰った方が……
そんなことを考えた時だった。



「お嬢さん……良かったら、お茶でも飲みませんか?」

振り返ると、そこには笑顔が素敵なイケメンがいて……
センスもスタイルも良いし、なんだか松川瞬に似てる。
こんな格好良い人がどうして、私なんかに……!?



「あ、あの…私、待ち合わせしてるんで……」

「奇遇ですね。
実は僕も待ち合わせしてるんです。
大山まどか似だって本人は言ってたんですけど、でも、ここにはそんな人いないんですよ。」

「え……」

心臓の鼓動がますます速さを増した。



「……ま、まさか……智君……?」

「智君じゃないよ。
酷いじゃないか。
大山まどかだなんて言って、実際はこんなに綺麗なんだもん。
僕、声かけるのに勇気を奮い立たせたんだよ。」



綺麗……?
お世辞だとはわかってたけど、私の心は激しく動揺した。



「そ、そんな……智君だって、自称松川瞬似だなんて言ってたけど、本当に似てるんだもん。
びっくりした。」

私は必死に平静を装ってそう言った。



「僕の場合は、松川瞬の髪型を真似てるから似て見えるだけだよ。
髪型マジックだね。」

そう言って微笑む彼は、松川瞬以上に格好良い。



「とりあえず、なにか食べに行こう。
僕、お腹ぺこぺこなんだ。」

「うん……あ……」



歩き出した彼の手が私の手を掴んだ。
彼の指が私の指に絡み付く。
驚きと恥ずかしさで顔は火照ったけれど、不思議といやな気持ちは少しもなかった。