「……僕だって……あなたのことが好きです。」

「え……」

今のは幻聴?
堤さんは今、私のことを好きだとおっしゃった?
私が混乱から覚めないうちに、堤さんはさらに言葉を続けられた。



「でも、あなたには家庭があると思ってましたから、僕はその気持ちを無理矢理に押さえ込んだ。
今はお互いが独身だとわかりました。
僕たちを阻むものはなくなったかのように思えます。
だけど……やっぱりそうじゃない。
僕は、生きる屍のような男です。
これからようやく花屋を始めることにはなってますが、それだって、なっちゃんや亮介さんのお膳立てがあったからです。
しかも、そこまでしてもらっても、僕は花屋を潰さずにやっていく自信がありません。
改装が進み、花屋の開店が近付くにつれ、期待よりも不安の方が募るんです。」

堤さんは必死で元気なふりをされてたんだということが、ようやくわかった。
もちろん事故当時よりはずっと元気になられてるんだろうけど、まだ一人で暮らしたり外で働かれるには少し早いんだと思えた。
だからこそ、夏美さんは心配されてるんだ。



「だから……あなたはもっとまともな男を選ぶべきだ。
僕みたいに…」

「ち、違います!
堤さんは素晴らしい方です。
真面目で努力家で優しくて…」

「やめてくれ!
僕がどれほど駄目な人間なのかは、僕が一番知っている!」

「やめません!
堤さんは間違ってます!
ご自分の良さを否定ばかりして…
それに……今がすべてじゃないんですよ!
今、生きることに前向きになれなくても、何年か後にはそうじゃなくなってるかもしれない。
今だけのことで、人生すべてを判断するのは間違いです!」

身体が震えて止まらなかった。
私は立ち上がり、全力でそう叫んだ。
堤さんにわかってほしくて……ご自分を責めることをやめてほしくて、その想いを心の底から叫んだ。