「本当にごめんなさい!」

とても幼稚な謝り方だけど、それは私の心の底からの気持ちだった。
どうして、もっと早く話さなかったんだろう……そのことを私はただただ悔やんだ。
こんな嘘吐きの私だもの。
何を言われても仕方がない。
そうは思っても、私はやっぱり堤さんの言葉が怖くて、俯いたまま身を固くしていた。



「篠宮さん……頭を上げて下さい。
そんなに謝らなくて良いですよ。
僕だって、ずっとあなたを騙してた。
なっちゃんと夫婦のふりをしてたんですから……」

「あ……」

「だから、おあいこですよ。ね?」

そう言って、堤さんは優しく微笑まれた。
その笑みを見ていたら、私の緊張も急にほぐれて……
あんなにびくびくしてたのに……
決死の覚悟で話したのに、堤さんはそれを少しも咎めることもなくて……



「なんだか……なんだか、おかしいですね。」

「……え?」

「……おかしいじゃないですか。
そう思われませんか?」

堤さんは、笑いを懸命に堪えてらっしゃるようで、肩が小刻みに震えいてた。
私には、堤さんの笑いの意味はわからなかったけど、堤さんが笑ってらっしゃることがとても嬉しくて……さっきまでの緊張も忘れて、気が付けば私も同じように笑ってた。



だけど……笑ってばかりもいられない。
私にはもうひとつ伝えなければならないことがある。



「堤さん……
せっかく楽しい気分の時に水を差すようで申し訳ないのですが……
もうひとつ、話したいことがあるんですが、話しても良いですか?」

「え…ええ……
なんでもどうぞ。」

「あまり楽しい話ではないんですが……」

「どんな話なんですか?」

堤さんの表情が、さっきまでとはがらりと変わった。



「……ある馬鹿な女の話です。」

私は、今までの自分のことを洗いざらい堤さんに聞いてもらうことにした。



そんな馬鹿な私が、本当に堤さんを愛して良いのかどうかを知るために……