「じゃあ、あとのことはよろしくね。」

「うん、わかった。」



次の日、僕は昼近くに家を出た。
昨日は家にいるつもりだったのに、今日はやっぱり山野さんと話をするのが億劫に感じられて、僕はまたなっちゃんに委ねて逃げ出した。



「小太郎、ファミレスにでも行って、なにか冷たいものでも飲もうか?」

「僕、アイスかプリンが良い!」

「そっか、じゃあ、そうしよう。」



それほど長い時間でもなさそうなので、僕は小太郎を連れて近所のファミレスに向かった。



「あのね、今度、ママと翔君のママとでお買い物に行くんだって。」

「ふぅ~ん、良かったな。」

なっちゃんは翔君のママとはけっこう気が合ったらしく、小太郎が話した買い物の話も昨夜なっちゃんから聞いていた。



「あ、翔君ね、おじいちゃんからランドセル買ってもらったんだって。
ブルーのすっごい格好良いやつ!
僕もブルーのが良いな!」

「あぁ…そうだな。
そろそろランドセルも買わなきゃな。」

僕の子供時代とは違い、最近のランドセルはとてもカラフルでデザインも豊富だ。
だけど、小太郎にとっては翔君と同じというところが一番重要なことらしい。



「ねぇ、僕にはもうおじいちゃんはいないの?」

「……うん。おじいちゃんもおばあちゃんも死んじゃったから。」

「翔君はおじいちゃんとおばあちゃんが二人ずついるって言ってたよ。」

「残念だけど、小太郎にはもうおじいちゃんもおばあちゃんも一人もいないんだ。」

「そっか~……」

こんな風にして、小太郎は少しずつ自分の家庭の事情を理解していって……
そして、やがて僕が本当の父親ではないことを知るんだと思うと、やはりなんともいえない不安な気持ちになった。