幸せの花が咲く町で

場所も道順もいまいちよくわからなかったから、僕達はタクシーでホームセンターに向かった。
その場所へはすぐに着いた。
おそらくは徒歩でもせいぜい十分くらいじゃないかと感じた。



「えっと、自転車と棚と……あと……」

僕は、目の端に園芸コーナーをみつけた。



「なっちゃん、土とか苗買って行こうよ!」

「え?あ、う、うん。」

庭はけっこう広い。
今までの家の十倍くらいはあるかもしれない。
とはいえ、以前の家の庭は、庭というより通路みたいなものだったから、花壇もごく狭いものだった。
だけど、母さんはそこでなにかをしていることが多かった。
園芸は母さんの唯一の趣味だったんだ。


なのに、僕はその花壇に関心を寄せることはおろか、まともに見たことさえなかった。
母さんが愛情を注いで育てた植物が、どんな花を咲かせたかということさえ知らない……



「母さん、野菜を作るんだってはりきってたよね?」

「え……?」

「前の家では作れなかったけど、今度は庭が広いから野菜を植えるんだって言ってたじゃない。」

「……そうだっけ?」

僕には覚えのない話だった。
きっと、いいかげんに聞いてたから記憶に残らなかったんだろう。



「僕、じゃがいもが好きー!」

「じゃがいもかぁ……じゃあ、じゃがいもも買おうか。
ねぇ、優一、じゃがいもって今植えても大丈夫なの?」

「さぁ…僕はそういうこと、まったくわからないから。」

僕達は、売り場の人に話を聞きながら、花や野菜の苗、そして肥料等をかごに入れた。
それらは他の買い物と一緒に配達を頼んで、僕達は、買ったばかりの自転車で家に戻ることにした。


「……なっちゃん……大丈夫?」

「大丈夫だって!前は乗れたんだから!」



小太郎は僕の後ろに乗せ、僕は自転車を押して進んだ。
なかなかうまく乗れないなっちゃんにひやひやしながら、僕らはどうにか家にたどり着いた。