「それじゃあ、いただきましょうか。
みんな、お腹いっぱい食べてね!」



金曜日、近くのレストランでお店の夕食会があった。
こんなことは、私がお勤めし始めてからは初めてのことだった。
しかも、夕食会のことを言われたのは前日。
まぁ、私には特に用事なんてないから、参加させていただいたけど、パートの吉井さんは来られなかった。



「なんだか懐かしいですね。
昔は良くこんな風に皆で食事してましたね。」

「そうね。
最近は顔ぶれも変わったし、今の人はこういうことがあんまり好きじゃないようだから……」

集まったのは、オーナーの奥さまと岡崎さんと私の三人だけだった。



「今日は慎吾さんはお忙しかったんですか?」

「そうじゃないんだけど……」

奥様は、なんとなく話しにくそうにして言葉を濁された。



「実はね……二人にはとても言いにくいんだけど……
お店を畳むことになったの……」

「えっ!!」
「えっ!」

私と岡崎さんは同時に声を上げていた。



「本当にごめんなさい。
山野のお兄さんが倒れたことは話したわよね?
退院はしたんだけど、結局、もう花の仕事は出来そうにないの。
それでね……山野が、田舎に戻って花農家をやりたいって言い出して……
本当にびっくりしたわ。
あの人とはいろいろ話し合ったのよ。
サトシはこっちにいたいって言うから、私がこっちに残ってお店を続けようかとも思ったんだけど、やっぱりそんな風に家族がバラバラになるのはいけないような気がしたの。
私は田舎で暮らしたことはないから不安も大きいんだけど……でも、花は大好きだからきっとなんとかやっていけると思う。
ただ、あなた達には本当に申し訳なく思ってるわ。
こんなことになってしまって、ごめんなさい。
私だって本当ならずっとあなた達と一緒に働きたかった……」

奥様はそう言って、目頭をそっと押さえられた。
考えもしなかった突然の話に、私は混乱して何も言うことが出来なかった。