「おばちゃん、いないね。」

「そうだね。
お店の中でなにかしてるのかもしれないね。」



次の日、篠宮さんの姿は店の前にはなく、いつものように挨拶を交わすことはなかった。
そのことがなんとなく寂しく感じられたが、特に買うものもなかったので無理に店の中をのぞくことはしなかった。



土曜日も花屋の方に用事はなかったので篠宮さんには会えず、そして、日曜は大型スーパーに出かけたのでやはり会えなかった。



たった三日……
それだけ会えないだけで、心の中にすきま風のようなものが通り抜けた。







「あぁ、悔しい!
あんなに安いのに、買えないなんて……
ねぇ、優一……冷蔵庫、もう一台買わない?
ここになら何とか置けるんじゃないかな?」

「なっちゃん……そんなことしてたら、僕達、みんな食べ過ぎで病気になっちゃうよ。」

「まぁ…確かにそうだよね。
あぁ、でも、すっごく残念~~!」

「そうだね。
まぁ、大勢でパーティとかする時は良いかもしれないけどね。」

ついぽろっとそんなことを言ってしまったけれど、パーティなんてする予定はもちろんなかった。



「そういえば、小太郎から聞いたんだけど、翔君ママが私に会いたいって言ってるんだって?」

「僕は直接は聞いてないけど、小太郎にはそんなこと言ってるみたいだよ。
それに、篠宮さんのこともあれこれ聞いてたみたい。
若いから何にでも興味があるんだね。」

「若いっていくつくらいなの?」

「う~ん…二十代前半から半ばって感じかな?
年の割にしっかりはしてるんだけどね。」

「うわ…そんなに若いんだ……やだなぁ……
いくら私が若く見えても、しゃべったらおばさんだってことがバレるよね。」

「生きてりゃ誰だって年取るんだし、おばさんだって良いじゃない。」



僕の頭の中に、明るい笑顔の父さんと母さんが浮かんだ。
そう……四年の月日が流れても、母さん達は、あの日以来少しも変わらない。
この先もずっと……
何十年経っても、あのままなんだ……