週末は幼稚園がお休みだから、小太郎ちゃんと堤さんの姿が見れず、なんとなく寂しい。
もしかしたら、また三人でお出かけなのかしら?と思うと、ほんの少し胸が痛んだ。



でも、本当はその方が良いのに……
三人が仲良くされてるのが一番良い。
誰も傷付かないのが一番良い。



「あ、篠宮さん。
さっき、スーパーの近くで堤さんをみかけたわよ。」

「え?堤さんって…旦那さんの方ですか?」

「そうよ。
小太郎ちゃんと一緒だったわ。
本当に仲が良い親子ね。」

「誰?誰?
堤さんって……」

「お客さん。
あ、サトシ……これ、店の中に持って行ってよ。」

荷物を押し付けられたサトシ君は、それらを店の奥に運んで行った。



「篠宮さん……言おうかどうしようか迷ったんだけど……
あなた、堤さんと親しいみたいだから。」

「何ですか?」

「あのね……今日、私一度家に戻ったでしょう?
その時……駅の近くで私見たのよ。
夏美さんを……」

奥様はどこか話しにくそうにそう言われて……
その時に私はなんとなく話の内容が想像出来るような気がした。



「な、夏美さんが何か?」

「立派な外車が停まってて…そこに夏美さんが乗り込んだんだけど……
それを運転してたのが、俳優さんみたいなイケメンで……」

鼓動が急に速さを増した。
それは、私が地下街で見かけたあの人だと確信した。
まさか、家の近くにまで来てたなんて……その大胆さに私は怒りを感じながらも、今は何とかこの場をおさめようと知恵を絞った。



「あ、あぁ、そういえば、夏美さん…今日は弟さんと会うとか言われてました。
なんでも、ご両親に会いに行かれるとか……」

「……弟さん?」

奥様は、怪訝な顔をして首を傾げられた。



「え、えぇ、年も近くて、昔から一緒にいると恋人同士に見られたとかって……」

「弟さん……そういえば二人とも華やかで目立つタイプだったわ。
それになんだかとても似合ってるっていうのか……そう、あの人、夏美さんの弟さんだったの……
でも、ご両親の所なら、どうして旦那さんや小太郎ちゃんは行かないの?」

「えっ!?あ……あぁ、詳しいことは知らないんですが、旦那さんと夏美さんのご両親の間に何かいさかいがあったらしくって……」

「まぁ、そうなの?」

「そんなことより、さっき、サトシ君に聞いたんですが、おじさまのご加減が良くないんですって?
どんな容体なんですか?」

私はこの話題を早く終わらせたくて、無理に話をすり替えた。



「まぁ、サトシったら、本当におしゃべりね。
実はね……」