幸せの花が咲く町で





「わぁ~…広くて綺麗なお家……!」

小太郎も来たことはあったはずだけど、小さかったせいか、覚えていない様子だった。
それは、僕も似たようなもので……
何度か来てはいたものの、あまりしっかりとは記憶していなかった。



「じゃあ、私の荷物は父さん達の寝室に……」

「だめだよ!」

それは反射的に僕の口をついて出た言葉だった。



「え……どうして……?」

「あ…ごめん……
でも、あそこは…もう少しだけあのままにしとこうよ。
だって…ここに越して来てから……
父さん達は一年も住んでないんだよ。」

なっちゃんは、僕をじっとみつめて、それからゆっくりと頷いた。



「そうだね。うん、そうしよう。
じゃあ、私、二階にするよ。
あんたもそうするでしょう?」

「うん。」

二階には泊まったこともあったのに、間取りも何もほとんど覚えてはいなかった。
リビングに良さそうな広めの部屋と、八畳と十畳程の洋間があり、十畳の方は建具を取り付ければ、二つに仕切ることも出来るようになっていた。
一階同様明るくて、なんとなく居心地の良い雰囲気だ。
ミニキッチンもあったし、やっぱりここには……



「父さん達、将来はあんたと暮らすつもりだったんだろうね。」

「……え?」

「ほら、ここがリビング、こっちが寝室で、ここは子供部屋だよ。
あんたが結婚したら、同居出来るようになってるんじゃない。」

それは思いがけない言葉だった。
僕はてっきりなっちゃん家族と住むつもりなんだと思ってたから。



「壁やカーペットの色合いもあんたのイメージだよね。」

なっちゃんに言われて僕ははっとした。
居心地が良いと感じたのは、そのためだったのか…?



今となっては、本当はどういうつもりだったのか、二人に訊ねることも出来ないけれど、なんだか僕は胸の奥がじんわりと熱くなった。