幸せの花が咲く町で

「優一……」

不意に僕はなっちゃんに抱きしめられた。



「ごめんね…優一……変わってあげられなくて……」

僕には、なっちゃんの言葉の意味がわからなかった。



「……ど、どういうこと?」

「あんたにばっかり辛い想いさせてごめん…!!」

そういうと、なっちゃんは大きな声を上げて泣き出した。
背中から感じるなっちゃんの暖かさが、より熱さを増した。



「あんたにばっかり辛い想いさせてごめん…!!」


さっきのなっちゃんの言葉が、何度も頭の中を駆け巡る。
なっちゃんは何も悪くないのに……
悪いのは僕なのに……
父さんや母さんが死んだのは、僕のせいなのに……



「は、離せよ…!
僕のせいで、母さん達は死んだんだ!
僕が辛い想いをするのは当然だろ!」

僕はなっちゃんを突き飛ばしていた。



「優一……」

なっちゃんは驚いたような顔をして、僕を見てた。



「ほ、本当はなっちゃんだって……
そう思ってるんだろ!?
ぼ、僕が母さん達を……母さん達を殺したって……!」

僕はすっかり頭に血が上って……
感情のまま、なっちゃんにそんなことを叫んでいた。
身体の震えが止まらない……
あの時の光景が……宙を舞う花柄の傘が思い出されて、僕は怖くてたまらず、大きな声を上げていた。



「馬鹿…!!」


乾いた音がして、一瞬、頭がくらっとして……
僕の目の前には、涙を流しながら唇を噛み締めるなっちゃんがいて……



「優一!あんた、自分が何様だと思ってんの!?
良い?良く聞きなさい!
母さん達が亡くなったのは、宿命なの!寿命なの!神様が決めたことなの!」

「違う……僕があの時、あんなに遅くならなければ……」

「あんた、本当に馬鹿ね!
急なアクシデントが起きたのも、そのせいで遅くになったのも、それもすべては神様の決めた通りにあんたが動かされただけのことよ。
あんたみたいなちっぽけな人間が、人の命をどうにかできるはずなんかないの!
母さんは……父さんは……もう誰にも助けられなかったの。
悔しいけど……天に召されることが決まってたんだから……」

なっちゃんは涙を流し、唇を震わせながらそう言った。



それを聞いた僕はさっきよりももっと大きな声で泣き叫んでいた。
なんだかよくはわからなかったけれど、なっちゃんの言葉が僕の心に深く…深く突き刺さった。



罪を逃れたいわけじゃなかったけど……
それでも、僕のせいじゃないと言われたことが、僕を地獄から救ってくれたような気がした。