「ねぇ…優一……今日は何があったの?
香織さんと何かあった?」

「そういうわけじゃないんだけど……
あ、なっちゃん…ちょっと来て。」

僕は、仏壇のある部屋になっちゃんを連れて行った。



「あ……」

部屋に入るなり、なっちゃんが小さな声を漏らした。



「何?」

「うん……これって香織さんが活けたんだよね?」

「そうだよ。」

「なんか……母さんっぽいなって思って……」

「やっぱりすごいな、なっちゃんは。」



僕はその花のことを話した。
その花に込められた篠宮さんの想いを……
なっちゃんは、僕の話を聞きながら、とても愛しそうに花瓶の花をじっとみつめた。



「それでね……
篠宮さんがこの部屋に飾ったらどうかって言ったんだ。
あ、この花瓶も篠宮さんがくれたんだよ。
多分、この部屋に合わせてだと思う。」

「うん、そうだよね。
ここに合ってる。
センスの良い花瓶だよね。
それで、どうしたの?」

「うん……ここに来ると、僕は、冷静でいられなくなるみたいなんだ。
それで…事故のことを話してるうちに、なんだかすごく感情的になって……」

「……そっか……それで……」

なっちゃんはそう言って深く頷いた。



「僕、篠宮さんにひどいことを言ってしまったような気がする。
……そうだ。篠宮さんは、母さん達が死んだのは運命だったんじゃないかってそんなことを言ったんだ。
きっと、僕のことを気遣ってのことだと思う。
なのに、僕は彼女を責めたんだ。
だったら、僕があの日この町に来なくても、両親は死んだだろうかって…
あんな雨の日の遅い時間に外出なんてしないだろうに、それでもトラックが家に突っ込んで来て死んでたとでもいうのかって……
それで、篠宮さんも泣き出して……
そこへ、小太郎が来て、僕らが泣いてるのを見てびっくりして泣き出して……それからはもう皆、涙が止まらなくなってね……」

なっちゃんは、頷きながら僕の肩を優しく叩いた。