幸せの花が咲く町で





「……いかがでしょうか?
和風の花瓶に、洋風の花っていうのも合うと思ったんですが……やっぱりおかしいですか?」

「いえ……すごく合ってると思います。
明るくて……でも、優しくて……」

僕は胸がいっぱいで、そのくらいしか言えなかった。
おかしなことに、その花を見ていると、なぜだか懐かしい感情が込み上げた。



「……堤さん……これ、あそこに飾ってもよろしいですか?」

「え……?」

篠宮さんが指さしたのは、仏壇のあるあの小さな部屋だ。
その時、ある想いが脳裏をかすめた。



「篠宮さん……もしかしたら、これは母のために選んで下さったんですか?」

「そうとも言えますし、そうじゃないとも言えます。
お母様は、今頃の季節にはこのお花をよく買われていました。
カタカナが苦手ってことで、グロリオサの名前がなかなか覚えられず、いつもキツネユリっておっしゃってました。
私はオレンジや赤が好きだけど、ピンクが入ると可愛くなるっておっしゃって、よくこういう組み合わせを買って行かれてました。
それで……お仏壇の前に飾ってさしあげたいと思いまして……」



篠宮さんの言葉を聞いて、僕は心の靄がさっと開けたような気がした。
そうか……懐かしい気がしたのは、きっとこれらが母さんの好きな花だったせいなんだ……



明るくて元気で……
でも、どこか少女のような無邪気さがあった母さんそのものなんだ。



「ありがとうございます。」

僕は花瓶を持ち、あの部屋へ足を踏み入れた。
ただ、そこには花瓶を置くにも花台のようなものはない。



「あ、そうだ。」

僕は、台所から小さなテーブルを持って来て、その上に花瓶を置いた。
小太郎がもっと小さかった時に使っていたアニメの柄のテーブルだ。



「ちょっと合いませんが、今日は間に合わせにこれで……」

篠宮さんは苦笑しながら頷いた。



「堤さん……どうしてここにはお花を飾られてなかったんですか?
お母様はあんなにお花がお好きだったのに……」

彼女にとってはなにげない質問だったんだろう。
だけど、それは僕の心を突き刺した。